パパイヤと呼ばれている男がいる。パパイヤ鈴木を凶暴にしたような顔立ちの男で、私のフットボールの教え子である。この度めでたくオーディションに合格してプロレスラーの卵になった。佐々木健介ファミリーの一員として新しい人生をスタートする。昨夜一緒に呑んで激励した。
パパイヤは大変の魅力のあるフットボール選手であった。彼は人と激しく当たることをこよなく愛し、かなりのハードヒッターであった。フットボール選手を大きく分類すると、当たることが本当に好きな者、普通に好きな者、そして実はあまり好きでない者がいる。パパイヤは度が過ぎる程の当たり好きであった。審判が笛を吹いてプレーが止まったことを知らせてもブレーキがかからずに相手をヒットして反則をとられる難点すらあった。何度言い聞かせても心の底からの欲望なのか、なかなか改められない。私もこれにはスパルタ的に対処するなど、結構困ったものであった。彼がリングデビュー後、心底楽しそうにフライングボディーアタックを相手に見舞う姿は容易に想像できる。幸せな話である。また彼は根性練(根性を必要とするきつい練習)に対してかなりの強さを持ち合わせていた。他の選手が動けなくなるような厳しい練習でも、極限近くまで追い込まれたところから激しい闘争心と底力を見せる。レスラーの世界は本当に厳しいと聞く。新入りがよく逃げ出すらしいが、この男に限っては大丈夫であろう。そしてまたほとんど怪我らしい怪我もしない頑丈な体をしている。
しかし私にとってパパイヤの一番の魅力は「必死で一途なところ」である。この男は自分の思いを成し遂げるために本当によく努力するし、「何が何でもやってやる」という気概がある。シーガルズ入部の時もそうであった。彼は青森出身であったが、シーガルズのトライアウト受験をする前に上京して千葉駅周辺の歓楽街の外れに安アパートを借りた。仮にシーガルズのトライアウトが不合格であっても、練習生としてチームにもぐりこみ、バイトをしながら生計を立て、翌年も再受験する腹であったらしい。地方大学リーグ出身で当時無名選手であった彼はどうしてもトップリーグで自分の力を試したかったそうだ。トライアウトの結果は当落線上であった。技術レベルが低かったのと、彼のポジションをトップリーグでこなすにはサイズが足りなかった。しかし我々は彼の真摯な思いと基礎体力の高さに賭けた。1年目いきなりのスターティングメンバーへの大抜擢に始まり、3年間中心選手として本当によく頑張ってくれた。
今回の健介ファミリー受験も同様である。彼は受験前に勤めていた会社を退社してテストに臨んでいる。
昨夜呑みながら「なんで先に会社辞めなあかんのや?」と彼に尋ねると「受験の準備を十分にしておきたかったのですが、もし不合格でも健介さんに土下座してそばにおいてもらおうと思っていました」とのこと。強引である。退路を断って挑戦するということがあるが、この男の場合退路など始めから存在しないのかもしれない。
いろんな人が成功の秘訣をシンプルに表現している。
なせばなる。
念ずれば花開く
成功する人は成功するまでやめない。
などなど。噛み砕いて言えばこれらは「何が何でもやってやる」という気概を説いているのだろう。それを体現しているのがまさしくパパイヤなのだろう。
頑張れパパイヤ!何が何でも夢を叶えろよ!