私がアメリカンフットボールのコーチを務める富士通フロンティアーズがパールボウルトーナメント(春の社会人関東ナンバーワンを決める大会)の準決勝に駒を進めた。今週の土曜日に決勝進出を賭けて、強豪オービックシーガルズと対戦する。
オービックシーガルズとの前回の対戦は昨秋。我々は気合、執念のみで勝利を手繰り寄せるような勝ち方をした。我々は序盤から致命的なミスを犯したり、最も注意すべきキープレーヤーに縦横無尽に走られたり、内容的には問題もあった。また戦力を比較しても明らかに劣勢であったが、我々は最後まで「強い気持ち」を絶やさずに厳しいゲームを闘い抜いた。守備陣はどう考えても相手に流れが傾きそうな場面で魂のこもったハードヒットを連発して守り抜き、攻撃陣は数少ないチャンスをものにした。この試合はフロンティアーズにとっては大きな「きっかけ」となり、その後チームは大きな成長を遂げた。
選手個人の成長も、チームの成長も少しずつ積み上がっていく時と、どこかでぼーんと跳ね上がる時がある。何かの「きっかけ」で跳ね上がるのであるが、選手個人の成長で言えば「なるほど・・・こういうことなのか」と腹に落ちたり、「これではだめなんだ」と心底学んだりすると変われる。コーチの仕事というのはそんな「きっかけ」を作り出したり、目の前にある「きっかけ」に気付かせてあげることとも言える。ゲームの中にはそんな成長の「きっかけ」がたくさん転がっている。多くの引退者を出して若返ったチームが、春の時点でオービックのような強豪チームと対戦できるのは素晴らしいことである。
今春、我々はフットボールの基本「タックル・ブロック・ボール」に立ち返り、春から基本練習を繰り返してきた。その「やってきたこと」を余すところなく発揮するゲームにしたいものである。その結果が「やれる」という「自信」になっても、「まだまだだ」という「勉強」になったとしても、それはどちらも大きな成長の「きっかけ」には変わらない。とても楽しみである。そして更なる「成長」の場、決勝戦に是非駒を進めたいものである。